センター長あいさつ

次世代の機会均等の確保のために


 昨今の日本社会は、子どもの貧困率の上昇や家計の経済状態と子どもの学力や進学機会との相関関係が明らかになるなど、次世代の経済格差拡大の懸念と、それを防ぐための新たな教育政策の必要性が高まっています。
 しかし、我が国の教育政策の議論は、政治的人気取りに利用されることも多く、印象論、体験論が幅をきかせています。そのような政策は、目的も効果も不明確な「ばらまき」や、政策提案自体が目的化することで教育現場の教職員の疲弊ももたらします。諸外国では近年、先進国のみならず発展途上国でさえ、政治的に中立的な研究結果(「エビデンス」)に基づいた政策立案(EBPM: Evidence Based Policy Making)を行うことが当然になってきました。しかしながら、我が国においては、ごく最近までEBMPの重要性が認識されていませんでした。
 「こどもの機会均等研究センター」は、こどもの機会の不平等の実態やその発生メカニズムについて、科学的視点から研究を行うとともに、関連する政策の評価研究を実施するために設立された研究組織です。
 慶應義塾の創設者である福澤諭吉は「学問のすゝめ」において、「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずといへり」と書きました。私たちは、子どもの機会均等を達成するための研究は、慶應義塾が、独立自尊の精神により実施しなければならない、最大のミッションであると心から信じるものです。

 どうか本センターの趣旨と活動にご理解とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。

慶應義塾大学子どもの機会均等研究センター長

同経済学部教授

赤林英夫