現在のプロジェクト

経済格差と教育格差の長期的因果関係の解明:親子の追跡データによる分析と国際比較 H28年度-H32年度

科学研究費助成事業基盤研究(S)16H06323の採択に基づき、平成28年度より5年間の予定で実施しています。

多くの先進国で経済格差の拡大と世代間の経済格差の固定化を懸念する声が高まっている。
ピケティ(2014)らによる実証研究は、米国を始めとする多くの先進諸国で、資産や所得の不平等が拡大していることを明らかにした。結果としての不平等のみならず、機会の不平等も深刻な問題である。日本においても、子どもの貧困の撲滅と世代間の貧困の固定化の解消は、次世代に希望を与えるための最重要課題であろう。
機会の不平等解消のために有効な教育政策は何か、人的資本投資により成人期の所得や社会的格差がどの程度解消されるのか、分野を越えた国際比較研究が進んでいるが、我が国においては、同じ子どものライフコースを就学前から長期にわたり追跡し、親世代の経済状況・学力・非認知能力、成人期における就業・所得などアウトカムを全て備えたデータが存在しなかった。そのため、長期的視野で教育政策を評価した研究も、そのようなデータ基盤に基づいた国際比較研究への参加も困難であった。
本プロジェクトでは、親子を追跡した調査と経済実験を施行し、子どもの養育環境・親の養育行動・教育政策と教育格差発生との長期的因果関連を解明する。特に、従来、研究代表者を中心に実施してきた「日本子どもパネル調査(Japan Child Panel Survey: JCPS)」の対象年齢を幼児期と青年期に拡張し、学力データの質を向上させ、家庭の経済格差がライフコースを通じて学力、非認知能力、行動に与える因果的影響を分析する。さらに、同一の親子を対象とした経済実験を長期間実施し、家庭における子どもの非認知能力形成メカニズムを解明する。以上の研究を基に、経済格差と教育格差の関係、教育政策の有効性について、国際比較を行う。

こどもの発達過程における教育達成の不平等の変動:6ヵ国の比較研究 H30年度-H33年度

欧州との社会科学分野における国際共同研究プログラム(ORA)の採択に基づき、日本側チームの代表として、平成30年度より3年間の予定で実施しています。

本研究課題の目的は、親の社会経済的地位(SES)がこどもの発達と教育達成に与える影響の生成過程の科学的理解と、その結果生じる世代間の社会経済的格差の連鎖を断ち切るための社会福祉政策・教育施策の効果の評価を、日欧米の長期追跡データや大規模データを用いた国際比較を通じて行うことである。
比較対象となる国は、フランス、ドイツ、日本、オランダ、英国、米国の6 カ国であり、共通のフレームワークは、各国における3 歳から16 歳までの長期追跡データと行政業務データ(administrative data)への「Data Harmonization=データの調和」技術の開発と適用である。それにより、教育上の不平等がこどもの発達とともにどのように進展するか、親や家庭のどのような部分の不平等が影響を与えるのか、また各国の政策が不平等の拡大をどの程度抑制するのか、という問題の研究が「調和の取れたデータ」により可能になる。
そのようなデータ基盤に基づき、

  • 幼児期および義務教育初期における不平等度と、育児/家庭環境や幼児教育/保育施設の役割に関する新しいエビデンスの発見
  • 初等教育期におけるこどもの不平等の進展の各国間の比較と、親子の関わり、学校と親の関わりなどが、不平等を減らす役割を持つかどうかの検討
  • 中学校入学時の不平等とその後の進展の比較と、学校のタイプやトラッキング(教育課程の分化)がそれらに与える影響、について分析を行う

これらのすべての分析で、こどもの能力や性格の観測できない異質性を考慮し、同時に、平均的効果のみならず、異なる分位点における影響の異質性に配慮を行う。

日本子どもパネル調査

日本子どもパネル調査では、慶應義塾大学パネルデータ設計・解析センター(PDRC)が実施する日本家計パネ調査(JHPS)、慶應家計パネル調査(KHPS)において、子どもの学習状況や発達状況について2年おきに調査を行っています。私は子ども調査の設計を担当するグループを統括しています。詳細は、下記のサイトをご覧ください。

 

日本家計パネル第二世代調査

日本家計パネル第二世代調査(JHPS-SG)では、慶應義塾大学パネルデータ設計・解析センター(PDRC)が実施する日本家計パネ調査(JHPS)、慶應家計パネル調査(KHPS)の調査対象者の18歳以上のこどもを対象に、PDRCと共同で、世代間のやりとりや社会経済的関連について、調査を行っています(CREOCとしては2年に1度、PDRCとしては毎年実施)。