この度、本センターの研究グループは、中国の研究者と共同で、日本、中国と米国の3ヶ国の幅広い年齢層の子どもを対象としたデータを用い、家庭背景が子どもの教育成果に与える影響に関する2本の国際共同研究論文を英文社会学専門誌に出版しました。日本のデータとして、本センターがパネルデータ設計・解析センターと共同で収集・整備を進める「日本子どもパネル調査」を利用しました。
幅広い年齢層の子どもを対象に、この3カ国で家庭背景と子どもの教育成果を系統的に比較した研究は、これまでほとんどありませんでした。
家庭背景と子どもの学習時間や学力に関する研究(学習時間論文)
家庭背景ごとの子どもの学力や教育投資の男女差に関する研究(男女差論文)
【研究のポイント】
- 学習時間論文
· 家庭背景(親の学歴や所得)が子どもの学習時間や学力に与える影響は、国によって異なる。
· 日米中3ヶ国のすべてにおいて、宿題時間の増加は、子どもの学力を上昇させる傾向にある。
- 男女差論文
· 親の所得水準が教育成果に与える影響には、国により、男女の差が観測される。
· 女子生徒の方が国語の学力は高く、国語が好きな傾向にあり、一方で、日米中3ヶ国ともに、男子生徒の方が数学が好きな傾向にあった。
· 数学の学力については、米国以外の男女差は観察されなかったが、米国では、男子生徒の方が学力が高い傾向にあった。
本研究により、
親の学歴や所得が子どもの学習時間に影響を与えること
各科目の学力や選好(好み)について男女差が存在すること
国によって一部の結果が異なること
が明らかになりました。
このことは、社会制度や文化背景が学力の形成過程に影響を与えていることを示唆します。
【原著論文】
[1]Nakamura R, Yamashita J, Akabayashi H, Tamura T, and Zhou Y. A Comparative Analysis of Children’s Time Use and Educational Achievement: Assessing Evidence from China, Japan and the United States, Chinese Journal of Sociology, 2020, 6(2): 257–285. doi: 10.1177/2057150X20911871.(オープンアクセス)
[2]Akabayashi H, Nozaki K, Yukawa S, and Li W. Gender Differences in Educational Outcomes and the Effect of Family Background: A Comparative Perspective from East Asia, Chinese Journal of Sociology, 2020, 6(2): 315-335. doi: 10.1177/2057150X20912581.
(オープンアクセス)
【[2]付録】
akabayashi_nozaki_yukawa_Li_webappendix